今回のビハーラセミナーは「“親なき後”とは何か ~障がい福祉のテーマを越えて考える~」と題して、講師に社会福祉法人秋田虹の会理事長兼施設長・桜田星宏氏をお招きして行われました。
福祉施設やサービスが今ほど整備されておらず、差別や偏見も厳しかった時代、障がい児・者福祉の世界では古くから「この子を置いて先に死ねない」といった声が度々親御さんから聞かれたそうです。
「お母さん、ぼくが生まれてごめんなさい」の詩でも知られる重度の脳性麻痺だった山田康文くんのエピソードを紹介され、当時の障がい児とそのご家族の苦悩は計り知れないものであったことを思いました。
そんな障がい者福祉の歴史を紐解きながら、法律や国の制度としては一進一退を繰り返しつつ現在に至ります。
民法877条では「直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある」と定められています。「親は子を、子は親を扶養しなければならない」というのは古来からの美徳のように思われますが、福祉サービスを利用したいのに定員が一杯だったり、金銭的な事情があったりなどの理由で利用できない時に、この民法877条が重くのしかかってくる場合があるとの指摘には驚きでした。
また近年言われる「8050問題」、高齢化した親世代の年金や蓄えが頼りで自立できていない中高年層が増加、もはや“親なき後”の問題は障がい者福祉の分野を超えて、社会全体で考えていかねばならない課題となっていることを強く感じるセミナーとなりました。
「親なき後」とは何か 〜障がい福祉のテーマを超えて考える〜
講師:桜田 星宏 氏
(社会福祉法人 秋田虹の会理事長・虹のいえ施設長)
日時:令和元年10月28日(月)午後6時〜8時
会場:やすらぎホール とわに~
能代市二ツ井町下野家後113-4 ℡ 0185-73-2737
JR二ツ井駅から徒歩5分
※参加無料
近年、障がい者支援の現場でキーワードとなっている「親なき後」、すなわち高齢となった親からの援助が見込めなくなった以降の不安について、障がいのある方々だけの問題にとどまらず、「8050問題」に象徴されるように非就労、独居や未婚、いわゆる“ひきこもり”の方なども含め、様々な立場で幅広い議論が必要と思われます。
なかなか答えの見出せない問題ですが、皆さんと一緒に考えてみませんか。