2019 6/30

この度のビハーラセミナーが「多田等観を知っていますか ~明治期にチベットへ渡った秋田の僧侶~」と題し、講師に秋田県立博物館主任学芸主事の池端広樹さんをお招きして行われました。

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多田等観(ただ・とうかん)は、1890年(明治23年)7月1日に秋田市土崎の西船寺で生まれ、明治末から大正にかけてチベットに入り修行し、日本への帰国に際して多数の仏典、文献を持ち帰り仏教学者として活躍した僧侶です。

教師を目指していた等観は、ひょんなことから京都に渡って西本願寺の大谷光瑞法主から当時留学していたチベット僧の世話係を命じられ、彼らの帰国の際に等観本人が拒んだにもかかわらず、同行してチベットへ向かうことに。

日本と国交のないチベットへ渡航するのは非常に困難を極めましたが、ラサへ到着しダライ・ラマ13世に謁見、7千人もの修行僧を抱える僧院にて修行の後に現地でも認められゲシェー(博士)の学位を得て、およそ10年の修行の後にダライ・ラマ13世の慰留もありつつ帰国、貴重な経典・文献を我が国にもたらした功績は特筆すべきものです。

帰国後、チベット再訪の機会をうかがったこともあったそうですが、第二次世界大戦の戦況も厳しくなり、戦後は中国のチベット侵攻により結局叶わぬことに…。
再度チベットの地を踏むことなく、当地の民衆や歴史、文化が脅かされる状況を等観はどんな思いで憂いていたことでしょう。

数奇に富んだその生涯は、多くのエピソードと相まって非常に興味深く、マニアックなテーマながらご参加された皆さんも熱心に聴き入っておりました。

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